「神戸・栄町と神戸のまち」

−来街者とメディアの分析を中心に−

【章構成】                                     

はじめに                            

 第1章 神戸のおしゃれスポット                      

11 旧居留置の概要                          

  12 トアロードとトアウエストの概要

  13 三宮センター街の概要

 第2章 栄町とは                             

  21 栄町の歴史

  22 おしゃれスポットとしての成立過程 

 第3章 メディアの中の各街                        

  31 情報誌の中の栄町

  32 情報誌の中の旧居留地

  33 情報誌の中のトアウエスト

  34 情報誌の中の三宮センター街

  35 4つの街の比較

4章 各街を訪れる人々                         

  41 調査方法と分類方法

  42 来街者の分析の結果

     (1)性別、年齢、行動単位になる分析結果

     (2)ガールズファッションのクラスターにおける分析結果

 おわりに                             

 

【論文要旨】

はじめに

神戸は、昔から「異国情緒溢れた街」、「ハイカラでハイセンスなおしゃれな街」などと評されてきた。このような神戸のまちには、ファッション雑誌や旅行雑誌等のメディアに取り上げられる「おしゃれな街」として「栄町」、「旧居留地」、「北野異人館」、「トアウエスト」、「磯上通り」、「三宮センター街」などがある。その中でも特に栄町に焦点を当てる。若者たちの流行発信地として人気を集めている栄町は、中心地から少し離れた場所に位置し、場所の面白味や「新しいこと、面白いことを始めたい」という思いから、若いオーナーによる個人経営の店が自然発生的に集まっている。同じ神戸の「トアウエスト」や東京の「裏原宿」、大阪の「南船場」といったエリアも栄町と同じようにして発生した街であり、若者たちの注目を集めている。こういった若者の街がなぜ街はずれや裏通りに形成され、人気を集めているのか。栄町と神戸にある「おしゃれな街」と評される他の街との比較をし、栄町の形成過程や特異性を明らかにする。また、若者たちを引き付ける栄町が「異国情緒溢れる街」「ハイカラでハイセンスなおしゃれな街」と評される神戸において、どのように存在しているのかを解明する。

1章 

神戸のおしゃれな街である「旧居留地」、「トアウエスト」、「三宮センター街」の歴史とおしゃれスポットとしての成立過程を説明している。

2章 

近年急発展をしており、若者の人気を集めている「栄町」の歴史とおしゃれスポットとしての成立過程を説明している。栄町はここ10年で大きく発展した街である。かつては港湾会社の街であり、ビルのテナントのほとんどは貿易会社で、倉庫が多数あった。1990年代に入ると、活気があった貿易業も廃れ始め、夜になると人気のない静かな町になっていた。このような栄町がバーやカフェレストランのオープンをきっかけに、おしゃれな街として若者たちの注目を集めるようになった。栄町には元貿易会社のレトロビルの一室を利用した小バコショップが多数あり、オーナーたちのこだわりに溢れている。この小さいけれどこだわりに溢れたショップが若者たちを魅了し、栄町へと足を運ばせている。栄町はセレクトショップ、古着屋、ハンドメイドの店、オリジナルブランドを扱う店、雑貨屋、インテリアの店、美容室、カフェ、レストラン、バー、食堂、貿易関係の会社などが点在しており、独特の雰囲気をかもし出している。

3

人々がある地域を訪れる際に重要な影響を与えていると思われるメディアの中で特に情報誌を取り上げ、情報誌において「栄町」、「旧居留地」、「トアウエスト」、「三宮センター街」の神戸の4つの街が、どのように取り上げられているかを分析し、それぞれの街の特性を明らかにしている。

u  栄町を表すキーワード 

「港町」、「レトロ」、「小バコ」、「マイペース」、「ユルイ」

u  旧居留地を表すキーワード

「レトロ建築」、「モダン」、「ハイカラ」、「ノスタルジー」

u  トアウエストを表すキーワード

「個性」、「小バコ」、「流行・トレンド発信地」

u  三宮センター街を表すキーワード

「メインストリート」、「マルチ」

4章 

3章では、情報誌の中での各地区を比較し、それぞれの街のがどのように捉えられイメージ形成されているのか、特徴を明らかにした。本章では、実際に街を訪れる人を観察し、各街がどのような街なのかを分析する。さらには、メディアが作り上げた街のイメージと実際の街の様子を比較し、それらの相違を明らかにしている。

u  調査方法 4つの各街においてそれぞれ30分間の定点観測を行った。

u  分類方法

・性別(男、女、男女に関係なく子供)

・年齢(ローティーンズは15才、ヤングは25才、アダルトヤングは35才まで、エルダーは36才以上)

・行動単位(単独行動、カップル、ファミリー、友人グループ)

・ストリートファッションのクラスター(ギャル系、ガールズ・カジュアル系、ボーイッシュ・エクストストリーム系、コンサバ・キャリア系、スタイリッシュ・フェミニン系 ※ただし、女性のみを対象としている)

u  来街者の分析結果

栄町:まだまだ訪れる人が少ない。大勢で訪れるには向かない街。のんびりと一人の時間を楽しむ街。

店員さんとの会話を楽しむ街。癒される街。高い感性を持ったおしゃれな大人が訪れる。

スタイリッシュ・フェミニン系が多い。高い感性を持ったおしゃれな人がありふれた街では物足りなくなり、オーナーたちの感性に溢れた街へ、自分の感性にあったもの、さらには新しい感性に触れるために訪れている街。

・旧居留地:大人の街。「コンサバティブ」で「エレガント」な街。大人のデートコースとしての街。コンサバ・キャリア系が多い。近年のおしゃれなセレクトショップの出店により、スタイリッシュ・フェミニン系も増えてきている。

・トアウエスト:栄町と比べ「若者の街」として確立されている。若い男性が最も訪れる街。

近年の低年齢化や来街者の増加により、観光地化されている街。ガールズ・カジュアル系が多い。

・三宮センター街:最も来街者が多い街。年配の方の訪街が多く、神戸人のなじみの商店街。

店も、人の種類もマルチな街。大型ショッピングビルが立地しており、ギャル系ショップが多い→他の街に比べギャル系が多い。各街へ移動するための拠点となる街。

また、ファッションクラスターの分析結果とその街にある店の関係から、各街とファッションクラスターには相関性があり、ある程度の棲み分けがなされていることが分かった。その街に行くことで、他の人のファッションを見て参考にすると同時に、自分と同じスタイルの人が集まる場所に行くことで同じ仲間だというアイデンティティーを確認しているのである。

おわりに

 栄町は既存のショッピング・スポットからの脱却を意識して、若いオーナーたちによってつくられた街である。まちはずれという場所性に面白味を見い出したり、儲け関係なく自分らしさを表現したりするための街なのである。現に大手ショッピングビル等から出店の依頼が来ているが、路面店でないと自分たちの世界観が表現できないと断り続けている店もあるし、若者たちはそういった店を支持している。オーナーたちのこだわりに溢れた街は、高い感性を持ち個性を重要視する若者たちを魅了し、足を運ばせるのである。また、情報誌の記事の表現や実際に街を訪れている人の声にもあるように、若者は格好付けたり、気取ったりするよりも、ゆっくりのんびりできる空間を好むようになっており、こういったまちはずれの隠れ家的な静かな街を好むのである。だから、人が多い三宮センター街や気取って歩く旧居留地ではなく、ゆっくりのんびり、自然体の自分でいられる栄町やトアウエストに多くの若者たちが訪れるのである。

しかし、トアウエストのように、メディアに頻繁に取り上げられ、認知度が上がると多くの人が街を訪れるようになる。すると、店が増え大手資本の出店も目立つようになり、またさらに人が増え客層が広がるが、街の個性は失われていってしまう。そうなると、先駆者的な若者や店は、新たな場所を求めていくのである。こうして、街の「新陳代謝」は行われているのである。今後の栄町の変化に注目したい。

 

【主要参考文献】

   伊富貴順一(1997):「郊外の「街」江坂と千里中央」,人文地理496

   神戸華僑華人研究会(2004):『神戸と華僑』,神戸新聞総合出版センター

   サントリー不易流行研究所(1999):『変わる盛り場 「私」が作り遊ぶ街』,学芸出版

   千村典生(2001):『戦後ファッション・ストリート』

   成瀬厚(1993):「商品としての、代官山」,人文地理456

   難波功士(2000):「ストリート・ファッションとファッション・ストリートの構築」,『関西学院大学社会学部紀要』

   道谷卓(2005):『新・中央区歴史物語』,神戸市中央区役所

   森涼子(2000):「まちづくりとメディアイメージ」,兵庫地理452237p

   渡辺明日香(2005):『ストリートファッションの時代』,明現社,1p110-114

神戸大学・発達科学部・人間環境学科・社会環境論コース・卒業論文一覧

神戸大学・発達科学部・人間環境学科・社会環境論コース・澤ゼミの内容