社会とは一人ひとりの人間の集合体であり、それぞれの主体的営為によって動かされるべきものです。ところが、われわれが生きている現代の社会をみわたすと、そうした努力にも関わらず、一人ひとりの人間が本来めざしているはずの「幸せ」からはどんどん遠ざかっていく、そんな矛盾がいろいろと見いだされます。人間の自由な発達が疎外されるこうした状況は、たとえば「核兵器と戦争」「低開発と飢餓・人口爆発」「環境と生態系の破壊」「性や人種による差別」「経済的合理性と管理主義による人間性の浸食」等々、様々な分野に具体的に現れているといえましょう。それら一つひとつが、私たち人間が、自らの社会をコ ントロールできず、破局に向かってまっしぐらに突き進んでいることを教えているかのようです。
しかしその一方で、このような矛盾にみちた人類社会を創りかえ、社会を本当の意味で「発展(development)」させていくのも、究極的には、やはり一人ひとりの人間の「発達(development)」とそれに基づく社会的営為、そしてその輻輳としての「類」的発達にほかなりません。今日ほど、人類が、自らの生存をかけ、これらの危機を作り出した自分自身をあらためて問い直し、自己変革=社会変革をすすめていくことが求められている時代はないでしょう。

「社会環境論」と は、このような人間発達と社会発展の相互連関を根底的に解明することをめざした社会に関する新しい科学です。その目的は、一人ひとりの人間の発達を基軸にすえながら、世界規模で進む歴史的な変動の内在論理を解明し、あるべき方向を模索することにあるともいえます。こうした新たな科学を構築するためには、経済学・社会学・歴史学・人文地理学・政治学・法律学・教育学・社会思想史学等、既存の諸科学の知見を十分にふまえつつ、さらにそれらの限界を突破していかなければなりません。この困難ではあるけれども、やりがいのある人類的な知の革新に、みなさんとともに取り組み、お互いに「発達」していきたいと思っています。
もっと詳しく知りたい方は、下記の出版物が参考となります。
社会環境論コースによる出版物