1990年代におけるわが国のリサイクル政策
―容器包装リサイクル法を素材にして―

指導教官 岡田章宏教官
島山淑子

【目次】
はじめに
第1章 容器包装リサイクル法制定の背景
1 ごみ問題の変容
(1)「第1次ごみ戦争」
(2)「第2次ごみ戦争」
(3)「リサイクル社会」志向への転換
2 リサイクルシステム構築上の諸問題
(1)ごみ2法
(2)リサイクルにおける経済的問題
第2章 容器包装リサイクル法の制定過程
1 各省庁の目的意識
(1)環境庁
(2)厚生省
(3)通産省
2 法律制定までの経緯
(1)厚生省主導の法案作り
(2)省庁間の争点
(3)容器包装リサイクル法の成立
第3章 容器包装リサイクル法の特徴と問題点
1 容器包装リサイクル法のしくみ
(1)役割分担
(2)分別収集計画の策定
(3)再商品化義務量の算定
2 容器包装リサイクル法の問題点@;事業者負担の低さ
(1)ドイツ、フランスとの比較
(2)容器包装リサイクル法上の事業者負担構造
3 容器包装リサイクル用の問題点A;市町村の分別収集実施率の低さ
(1)分別収集計画の策定状況
(2)分別収集、再商品化の実態
おわりに 

【要旨】
 1990年代に入り、それまでの「燃やして埋める」という廃棄物処理政策が「リサイクル社会」に向けて転換し始め、リサイクルの制度化を目的とした法律が相次いで制定された。本稿は、そういった法律のひとつとして1995年6月に成立した容器包装リサイクル法を素材とし、わが国のリサイクル政策の問題点を明らかにすることを目的としている。


 第1章では、容器包装リサイクル法が制定された背景を考察した。都市部だけでなく地方をも巻き込んだ「第2次ごみ戦争」は、焼却処理ではごみ減量化が図れないことを示した。そこでリサイクルシステム構築に向けて廃掃法改正とリサイクル法の制定が行われたが、コストのかかるリサイクルは“逆有償”により停滞した。そのためリサイクルを経済的に維持発展させるための法律として容器包装リサイクル法が制定されることになった。


 第2章では、容器包装リサイクル法の制定過程を、関連省庁の出した報告書を元に整理した。環境庁はデポジット制を提案し、厚生省はリサイクル義務の負担を市町村だけでなく消費者、事業者にも振り分けることを求めた。通産省は、事業者のリサイクルの役割を認めたが、分別収集は市町村が行うべきだと主張した。廃棄物処理所管の厚生省と、リサイクル所管の通産省が歩み寄り、「市町村による分別収集、事業者によるリサイクル」という容器包装リサイクルシステムが整備されることになった。


 第3章では、容器包装リサイクル法の問題点を整理した。独・仏のシステムと比べ、日本では分別収集の費用を市町村が負うため、事業者の負担は軽い。また、事業者のリサイクルの義務量は、市町村の分別収集見込み量に基づいて算定されるため、市町村の分別収集が進まなければ、事業者の負担はそれだけ軽くなることになる。実際、市町村の分別収集状況はごみ排出量に対してまだまだ低く、リサイクルにインセンティブを与えるという容器包装リサイクル法の目的はうまく達成されていないといえる。


 事業者にリサイクル義務を課すことでリサイクルにインセンティブが与えられるが、リサイクルに関わる公共政策の果たす役割も大きい。リサイクルコストを、誰がどのように負担すべきなのか。容器包装リサイクル法の施行は、その大きな問題を投げかけているのだ。

【参考文献】
厚生省生活衛生局水道環境部監修『一目でわかる!容器包装リサイクル法 決定版』国政情報センター、1998年
厚生省生活衛生局水道環境部監修『包装廃棄物新リサイクルシステム』ぎょうせい、1994年
田口正巳『これからのごみ行政−環境先進国への途−』ケイ・アイ・メディア、1999年
寄本勝美『政策の形成と市民 容器包装リサイクル法の制定過程』有斐閣、1998年
山谷修作編『廃棄物とリサイクルの公共性論』中央経済社、2000年
越川葉子「容器包装リサイクル法はごみ排出抑制システムとして機能しているのか−法律施行後の
実態調査を踏まえて−」(『月刊廃棄物』第25巻第4号、1999年4月)


発達科学部・社会環境論・卒業論文題目