地域イメージの再生産と変化
−神戸市東灘区を事例対象地域として−

石橋 伸彦
                         指導教官 澤 宗則



1章 はじめに
  (1)イメージについて  

  (2)従来の研究

  (3)本稿の目的

  (4)調査方法
  
第2章 地域イメージの形成 
  (1)外国人がつくった神戸   
  (2)日本の近代化と鉄道の敷設 
  (3)阪神電鉄と阪急電鉄    
  (4)阪神間の住宅地開発
  (5)富裕層による住宅地開発

  (6)阪神電鉄沿線地域 

  (7)現在の東灘区の概況

  (8)地域イメージの形成
 
第3章 東灘区住民による居住地選好の傾向 
  (1)アンケート調査による選好評価の全体傾向 
  (2)選好評価の高い地域と低い地域
  (3)選好評価と地域要素(連想されたものや事柄)との関連
  (4)環境把握の要因 
  (5)イメージされやすい地区とされにくい地区
  (6)地域イメージと選好評価の関連 

第4章 住宅広告に記載された言葉についての考察
  (1)記載された言葉の全体傾向
  (2)住宅広告とアンケート調査結果との関連 

第5章 地域イメージの再生産と変化 
  (1)地域イメージの再生産と変化 
  (2)「情報」よる地域イメージの再生産と変化 
  
6 おわりに


<論旨>


 地理学において知覚・行動の分野が成立してから10年以上が経過し、数年前からは知覚と行動の二極分解、さらには知覚部門の多様化が進展していると指摘されてきた。そして従来、心理学用語であった「イメージ」は、今や心理学研究者のみでなく、地理学研究者にとっても魅力的な研究対象として、その位置を確立するに至っている。そこで本稿では、尾藤(1996)が定義した「地域イメージ」=「都市域に対して大多数の人々が共通に思い描く心的な内容」を基本概念として、東灘区の地域イメージの一端を明らかにするという目的で卒業研究を進めた。
 具体的には、まず対象地域とした東灘区についてのアンケート調査と東灘区の新築分譲マンション広告に見られる地域を形容する言葉の抽出を行なった。そしてそれらを分析することによって地域イメージ形成要素を抽出し、その抽出された地域イメージ形成要素とアンケート調査によって明らかとなった単位地区(東灘区を13の小学校区で区分けしたもの)ごとの居住地選好評価(以下、選好評価)、地域評価との関連について検討を行なった。


 第1章では、地理学分野においてのイメージの定義的解釈や環境認知に関する従来の研究、そして本稿の目的、調査方法について述べている。

第2章では、明治から昭和初期にかけての神戸の様子を概観するとともに、対象地域である神戸市東灘区を含む阪神間での住宅地開発、鉄道敷設等の様子を概観している。そしてその後、東灘区の現在の状況について述べている。

第3章、第4章では、調査によって明らかになった結果を示し、その検討を行なっている。

第5章では、地域イメージが変化、そして再生産される過程について述べている。

最後に第6章で、本稿で明らかとなった次の3つのことを記している。

●東灘区の山側と海側での選好評価に大きな違いがみられた。
●あるひとつの地区に対する選好評価と地域評価は大きく関連を持っており、お互いに影響を与え合っている。そして、交通・買物利便性に対する評価よりも自然・教育環境に対する評価のほうが選好評価に与える影響が大きくなり、その影響は特に評価が低い時のほうが、より大きくなる。
●東灘区の地域イメージは、今までの市街化や近代化の過程で影響を受けた。そして新興住宅地の形成や交通インフラの整備などが景観を変化させるにつれて、徐々に東灘区の地域イメージは変化する一方で、それぞれの地区ごとにイメージが固定され、その固定されたイメージが何度も人々に想起され続けるというイメージの再生産が生じている。


<主要参考文献>
尾藤章雄(1996):『都市の地域イメージ』,古今書院,216p.
作道洋太郎(1995):阪急電鉄−その経営と沿線文化の発達−,『民鉄営の歴史と文化−西日本編』,143−166p,古今書院,258p.
坂本勝比呂(1997):郊外住宅地の形成、『阪神間モダニズム』、淡交社、25−54p.
和田克巳(1997):『昔の神戸』,神戸新聞総合出版センター,269p.
ケヴィン・リンチ(丹下健三・富田玲子共訳)(1968):『都市のイメージ』,岩波書店,276p.
ポール・ノックス(小長谷一之訳)(1993):『都市社会地理学(上巻)』,地人書房,306p.


神戸大学・発達科学部・澤ゼミの内容

発達科学部・社会環境論・卒業論文題目