「都市の記憶」を活かしたまちづくり
−神戸旧居留地の事例を通じて−
橋本 勝人


○目次
はじめに 
第1章 「都市の記憶」研究の位置付け 
 1−1 研究の意義
 1−2 研究方法
 1−3 歴史的なるものへの視点
 1−4 まとめ
第2章 神戸旧居留地という記憶 
 2−1 神戸外国人居留地の成り立ち
 2−2 外国人居留地の記憶
 2−3 旧居留地としての再出発
 2−4 旧居留地としての記憶
 2−5 まとめ
第3章 「都市の記憶」を演出する人々 
 3−1 大丸神戸店の空間戦略
 3−2 旧居留地連絡協議会の空間戦略
 3−3 行政の関わり−神戸市都市計画局アーバンデザイン室
 3−4 情報メディア・消費者と旧居留地の「都市の記憶」

3−5 まとめ
第4章 むすびにかえて 
 4−1 旧居留地の抱える課題
 4−2 残された課題
 4−3 「都市の記憶」研究の展望


○ 要旨

本研究の目的は、ある特定の場所において、その場所で起こるさまざまな出来事や社会活動を通じて形成される、その場所特有の歴史性が形成される過程を解き明かすことである。

特に、本研究では都市に着目し、都市空間の中のある特定の場所において、その場所独自の歴史性に由来する場所性が獲得される過程を検証する。この場所性のことを本研究では「都市の記憶」と呼ぶ。「都市の記憶」とは、ある特定の場所性があたかも脈々と受け継がれる記憶の流れのように、都市に堆積していく様を指す。本研究で事例地域として取り上げた神戸旧居留地地区は、地区内に残る近代建築を、ブランドショップを採り入れた商業空間として再活用し、高級感ある街のイメージを作り出している。いわば、「都市の記憶」を商品化し、再生産する試みが成功している地域といえる。旧居留地では、「都市の記憶」がまちづくりのキーワードの一つとなっているのである。本稿では旧居留地のまちづくりに関わる人々、さらにファッションの街としての旧居留地イメージを求めてやってくる消費者、あるいはイメージを広く伝播する情報メディアとの関わりを含めて、旧居留地の「都市の記憶」にどう影響しているのかを検討した。

特に、本研究では都市に着目し、都市空間の中のある特定の場所において、その場所独自の歴史性に由来する場所性が獲得される過程を検証する。この場所性のことを本研究では「都市の記憶」と呼ぶ。「都市の記憶」とは、ある特定の場所性があたかも脈々と受け継がれる記憶の流れのように、都市に堆積していく様を指す。本研究で事例地域として取り上げた神戸旧居留地地区は、地区内に残る近代建築を、ブランドショップを採り入れた商業空間として再活用し、高級感ある街のイメージを作り出している。いわば、「都市の記憶」を商品化し、再生産する試みが成功している地域といえる。旧居留地では、「都市の記憶」がまちづくりのキーワードの一つとなっているのである。本稿では旧居留地のまちづくりに関わる人々、さらにファッションの街としての旧居留地イメージを求めてやってくる消費者、あるいはイメージを広く伝播する情報メディアとの関わりを含めて、旧居留地の「都市の記憶」にどう影響しているのかを検討した。

第1章では、従来の建築学、社会学双方からの都市論を取り上げ、「都市の記憶」研究を進めるためには両者を統合した視点を持つことが重要であると述べた。さらに、その中でも歴史的なものの持つ価値が現代の資本関係の中で再発見される背景について述べた。
第2章では、神戸旧居留地の歴史を振り返り、それぞれの時代ごとに卓越していた旧居留地(兵庫津)の表情が生み出された背景を明らかにし、それらの「都市の記憶」の要素が現在にどう受け継がれているのかを明らかにした。
第3章では、旧居留地に関わる「都市の記憶」の主体として、大丸神戸店・旧居留地連絡協議会・神戸市アーバンデザイン室・情報メディア・消費者の5つを取り上げ、分析した。その結果、これらの主体が相互に影響を与え合いながら旧居留地が持つ「都市の記憶」の一要素である、「日本の中の異国」としての性格を強調し、現在のような非日常を味わうことのできるファッションの街へと変貌させていった過程が明らかとなった。
最後に、第4章では旧居留地が抱える課題、及び「都市の記憶」を活かしたまちづくり全般に関する課題を明らかにした。それは、歴史的建築を保存するための枠組み作り、そして、人々の相互作用によって生み出される「都市の記憶」を複眼的に捉えることの重要性の二点である


○主な参考文献
エドワード.レルフ著,高野岳彦・神谷浩夫・岩瀬寛之共訳(1999):『都市景観の20世紀』,筑摩書房,308p. Edward Relph. (1987):Modern Urban Landscape. Croom Helm
岡本哲志(2000):図説 都市・銀座の破壊と再生.福井憲彦・陣内秀信編:『都市の破壊と再生 場の遺伝子を解読する』,相模書房,51-83
片桐新自編(2000):『歴史的環境の社会学』,新曜社,260p
神木哲男・崎山昌廣編著(1993):『神戸居留地の3/4世紀』,神戸新聞総合出版センター,272p
鈴木博之(2001):『現代の建築保存論』,王国社,221p
デヴィッド・ハーヴェイ著,吉原直樹監訳(1999):『ポストモダニティの条件』,青木書店,478p. David Harvey(1990):The Condition of Postmodernity.Blackwell Publishers
西村幸夫(2000):『西村幸夫都市論ノート 景観・まちづくり・都市デザイン』,鹿島出版会,195p
森涼子(2000):まちづくりとメディアイメージ.『兵庫地理』,兵庫地理学会,22-38
吉見俊哉(1987):『都市のドラマトゥルギー』,弘文堂,355p

神戸大学・発達科学部・澤ゼミの内容