京都駅ビルのインパクトと駅の将来性
                              
井原正順

【章構成】
序論
1沛ヘ 京都駅ビルの誕生
1節 経緯
 [1] 京都駅と周辺地域の移り変わり
 [2] 京都駅改築の主要経緯
2節 原廣司の京都駅に対する意図
2章 駅ビル開業のインパクト
1節 周辺地域への影響
 [1] 地元商店街
 [2] 駅周辺地域の人口変化、物理的変化
2節 景観問題
 [1] 都市景観の構成要素
 [2] 京都の景観保全の歴史
3章 都市開発としての京都駅ビル
1節 駅の多機能化
2節 都市と駅
3節 駅の将来性
終論 結論
参考資料一覧



【論文要旨】
巨大な新京都駅ビルが1997年7月に開業してから、4年半が経過した。同ビルは、1984年に平安建都1200年記念事業として指定されて以来、旧国鉄、京都商工会議所、京都市、京都府からなる京都駅改築協議会が構想をかため、具体化してきたものである。この間、国鉄が解体されJRとなり、さらにバブル景気のもとで第3セクター方式による巨大都市再開発ブームがおとずれる。新京都駅ビルの建設もこのような環境変化と深く結びついたものであった。
 同ビルについては、建築構想が明らかとなって以来、主として景観問題の視点から、その是非をめぐって京都市民だけではなく、文字通り国民的な規模での論争がなされてきた。また、開業後は、ジェイアール京都伊勢丹の好業績と既存の京都百貨店業界の低迷振りが、注目されることになった。本論文では、この新京都駅ビルの開業が地域に与えたインパクトについて調査することにした。
 これまで「新京都駅ビル」をテーマにした記事・論文は数多く存在するが、景観問題・建築的問題・経済的問題ばかりが取り上げられ、都市開発という視点からの論文が少ないようにように思えた。そこで、本論文では都市という視点から「新京都駅ビル」を考察し、都市における駅の将来のあり方を示すよう努めた。



 本論文の構成は以下のとおりである。
 まず、第1章では、新京都駅ビル建設過程を振り返ることにする。旧京都駅ビルの歴史、京都市の都市計画や平安建都1200年事業との関連を検証しながら、実際どのような新京都駅構想が生まれ、それが実行に移されたのか、膨大な建設費の投入や国際コンペの実施をしてまで大規模な駅ビルである必要があったのか、そして設計者の原廣司は京都駅ビルにどのような意図をもって取り組んだのかを述べる。原廣司は京都駅ビルのコンセプトを「歴史の門」とし、さまざまな場面を想定した駅ビル建設を試みていることが分かったが、はたしてそれが駅利用者に伝わっているかは疑問の残るところである。
 第2章では、新京都駅ビルが駅周辺地域に与えたインパクトを主に地理的側面から探っていくことにする。駅ビル周辺の商店街、人口変化などの要因を考察する。また、京都が今も抱えている景観問題についての歴史も降り返ってみることにする。駅ビル開業後、周辺商店街の客足はぱったりと止んでいたが、駅周辺の人口に大きな変化は見られなかった。そして、景観の歴史を振り返ると、「美と調和」を重んじる京都市民により特異ともいえる京都の景観問題が展開されていることが見受けられた。
 つづいて第3章であるが、駅という建築物を都市という視点から考察していく。現代、駅は都市の中でどういった存在になっているのか、駅ビルの機能の変化、本来の駅のあり方などである。日本の都市づくりでは都市計画においても交通計画においても「駅が都市づくりの中でどうあるべきか」が突き詰めて論じられないままなおざりにされてきたようである。新京都駅はそれを象徴していると言えるだろう。駅は「交通のステーション」から「地域のステーション」へと変革すべきである。しかし、そのためには都市開発の明確なビジョンを提案する必要がある。そうすればおのずと駅の将来像が見えてくるのではないだろうか。
 そして終章に結論としてこれらのことを踏まえた上で、私が考えた都市の中の駅について述べていく。第三章で述べた駅像に付け加えて、京都駅ビルを例に考えると、京都駅ビルは京都の都市計画の位置づけとして「再生と創造」の役割を請け負っている。私はこのことを京都市民のどの程度の人が認知しているのかと思う。都市の顔である駅であるからこそ、その都市に住む市民が積極的に関心を持ち、駅を考えていかなければならないのではないか。
 残された課題として、京都市民が京都駅ビルに対してどのような思いを抱いているのかをより深く考察すべきだと思う。すなわちそれは、都市開発に関して日本市民がどれほどの関心を抱いているかの良い指標になるのではないだろうか。「都市開発と市民の関わり」このことが今後の課題といえよう。

【参考文献】
・インターシティ研究会(1997):「駅とまちをつなぐ ひと・まち・暮らしをつなぐ」、学芸出版社
・大野秀敏(1994):「現代日本の都市空間とアーバンデザイン」
http://kingo.arch.t.u-tokyo.ac.jp/ohno/po/article_Folder/gendainihon.html
・苅谷勇雅(2000):「京都における新しい景観・まちづくり構想」
http://www4.justnet.ne.jp/^u2takahashi/mupreport/report4-6.htm

・永田素彦・杉万俊夫(1993):「都市開発をめぐるコンフリクト解析―京都駅ビルの高層化について
http://www.users.kudpc.Kyoto-u.ac.jp/^c54175/research/field_study/F-006.htm
・西村幸夫(2000):「都市論ノート 景観・まちづくり・都市デザイン」鹿島出版社
・「新しい京都駅」(1997)、彰国社
・京都市編「京都の歴史 第8巻 第9巻」、学芸書林
・京都新聞 1998年9月10日付け、1999年5月21日付け
・「デザインの現場 11月増刊 新しい京都駅」(1997)、美術出版社

神戸大学・発達科学部・澤ゼミの内容