ごみ広域処理と地域間関係−香川県塩江町ごみ焼却場問題を事例として−
田中 邦明

<章構成>
第沛ヘ はじめに
1 問題の所在と研究目的     2 研究対象地域について

第章 日本におけるごみ広域処理の構造と問題
1 廃棄物の種類について     2 ごみ広域処理の推進について
3 ごみ問題と地域紛争について  4 ごみの広域移動の構造について

第。章 香川県塩江町ごみ焼却場問題の経緯
1 事例地域の概要        2 塩江町ごみ焼却場問題の経緯

第「章 ごみ広域処理に伴う地域間関係の問題と今後のあり方
1 塩江町ごみ焼却場問題に関わる各主体とその特徴  
2 各主体間の関係
3 塩江町ごみ焼却場問題における地域間関係の問題と課題
4 塩江町ごみ焼却場問題がもたらした地域間関係の変化  
5 まとめ

第」章 おわりに



<論文要旨>
第沛ヘでは、本稿における問題の所在と研究目的について示した。
日本は高度経済成長時代以来、急速な都市化・工業化により経済大国に成長したが、その発展のひずみとしてごみに関する問題が顕在化した。都市地域における生産・消費、過疎地域における廃棄という社会システムが一般化し、ごみの排出地域と受け入れ地域が大きく乖離・分断されてきた。ゆえに、ごみ処理場設置に関する紛争や、ごみ処理施設周辺における環境汚染問題など受け入れ地域に発生する諸問題は、排出地域の住民からは「自分には関係が無い田舎の問題である」といった認識をされることで、受け入れ地域からの住民の声は封じ込まれてきた。
1997年に厚生省が策定した新ガイドラインでは、さらなるごみの広域処理の推進を図る内容となっている。ごみの広域処理は、ダイオキシン発生抑制やコスト面での削減が見込めるものの、さらなる排出地域受け入れ地域という色分けがはっきりとなされることで、地域間での不平等の拡大も懸念される。ゆえに本稿では、従来のごみ広域処理に伴う問題の構造について明らかにすると共に、今後ごみ広域処理推進の上で望ましい地域間関係のあり方と課題について考察することを目的とする。

第章では、これまでの日本におけるごみ広域処理の構造と問題点について明らかにした。都市部におけるごみ発生量の増加に伴う処分場不足や交通網の発達は、ごみの広域移動をもたらした。ごみの広域移動は、地域間における経済格差との関連が如実に表れており、財政基盤の脆弱な自治体に対して相対的に財政力のある自治体のごみ処分場が多く設置されている。また、これらごみ処理場設置に関する意思決定は、行政間で秘密裏に行われてきたため行政に対する住民の不信は紛争の大きな原因となった。

第。章では、第章で示したごみ広域処理の構造と問題点を踏まえた上で、香川県塩江町ごみ焼却場問題を事例に取り上げて検証する。塩江町ごみ焼却場問題は、高松市のごみ処理場を塩江町に建設することについての是非をめぐって塩江町で勃発した紛争である。高松市と塩江町の間の大きな人口・経済格差と、塩江町で勃発した行政の秘密主義を弾劾した反対運動の存在などから、この紛争の発生原因は、従来のごみ広域処理に伴う紛争問題の典型的な事例であるといえる。しかし、この問題を通じて、高松市と塩江町の各行政と住民間の関係は、分断から連携へと大きな変化を見受けることができた。

第「章では、塩江ごみ焼却場問題に関係してくる住民や行政などの各主体の特徴や性格について詳しく解説するとともに、それら各主体間同士の関係についての分析を行う。さらに塩江町ごみ焼却場問題を通じて変化してきた各主体間の関係について検証することで、今後ごみ広域処理を行っていく上でのごみの排出地域と受け入れ地域の望ましい地域間関係についてのモデル図を示した(裏面参照)。

第」章では、本稿のまとめと今後の課題について示した。ごみに関する問題は、全ての人間が生活していく上で必ず関わっている問題であり、決して局地的な地域問題などではありえない。これまで生じてきた地域間関係の不平等を解消し、利害を調整するためにも、住民と行政が互いに向き合うことを前提とした上での、地域間の相互連携システムの整備は重要になるだろう。



<主要参考文献>
・ 環境省(2001):『環境白書 平成13年度版』ぎょうせい
・ 香川県(2001):『一般廃棄物の現況 平成11年度実績』147p、香川県生活環境部環境局廃棄物対策課
・ 熊本一規(1999):『ごみ行政はどこが間違っているのか?』合同出版、179p
・ 田口正巳(2000):ごみ広域移動と紛争の拡大,都市問題、第91巻3号、27―40p
・ 高松市(2001):『清掃事業概要 平成12年度』高松市環境部環境総務課、130p

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