「合唱活動」が地域イメージに与える影響〜神戸市を対象として〜

佐藤 晋


《章構成》

はじめに
第1章 「地域イメージ」に対する分析方法
 @「合唱活動」と他の文化活動との違い
 A「地域イメージ」分析における対象
 Bイメージ強度における指標、分析方法
第2章  合唱とイメージとのかかわり
 @合唱曲とイメージにおける関連
 A合唱団内におけるイメージ統一の過程
 B「合唱活動」と「地域イメージ」の関係、
そしてその関係における仮説の提示
第3章  アンケート調査における分析
 @調査手法
 A調査対象
 B分析
おわりに


《論文要旨》
○研究目的
 人間の生活において、イメージと文化活動(特に芸術と呼ばれる分野において)の間には深い関係がある。そこにはその活動形態の違いのように、生まれゆくイメージの形成においても相違が見られるのだろうか。そして、形成されたイメージにはどういった特徴が現れてくるのか。その疑問を、筆者の経験した合唱という文化活動、そして神戸という地域に関するイメージにおいて解き明かしていきたいと思ったことが、本研究の直接の動機である。
本研究で対象とするイメージは、内田(1987)の、環境としての地理的空間=場所に対して、ある主体が抱く広義のイメージ(知覚、感覚、記憶、知識、想像など心的な内容のすべて)という概念を踏襲、それを「地域イメージ」と定義するものである。また、本研究上での合唱とは、標準音楽辞典(1996)による、一つの声部に数人の人がいて、その声部が、いくつかあつまって同時にうたうことにより生じてくる、人声のアンサンブル、という対象を指すものとする。そして、合唱に関わる全ての活動をさして本研究では「合唱活動」と定義し、研究を進めていくこととする。
本研究においては、「合唱活動」がその過程において「地域イメージ」にどういった影響を及ぼすのか、ということを、「地域イメージ」の自由記述という手法により分析、考察する。

○「地域イメージ」の自由記述
まず「合唱活動」が「地域イメージ」形成に何か影響を及ぼした場合、その特殊性を測る指標を「地域イメージ」数とし、それを「地域イメージ」強度とする。そこで「合唱活動」に関わる人々、それ以外の人々それぞれに「神戸」に対する「地域イメージ」を自由記述してもらった。その結果から、『景観的地理環境から抱くイメージ』『歴史的な事柄から抱くイメージ』『文化的要素から抱くイメージ』『政治・経済的要素から抱くイメージ』『個人体験から抱くイメージ』を抽出・分析した。

○分析、そして考察のまとめ
「合唱活動」はその過程において「地域イメージ」強度にどういった影響を及ぼすのか。それについての分析・考察の結果をまとめてみる。
「合唱活動」を行う集団の中で、解釈などの複雑なイメージ形成過程における、イメージのフィードバック、つまり同じ対象にむけて抱く他者のイメージを、各段階において受け取ることで循環・強化させていく行為(図沁Q照)の経験により、その中で「合唱活動」に関わる人々はイメージを強化させることについて一つの手法を修得する。それによって合唱の内のみならず、その外にある「地域イメージ」をも強化させていく特性を身にまとっていく。そしてそこには集団内における「地域イメージ」を統一させる働きもあるのである。また、そこでの経験において、地域における居住年数と、「地域イメージ」数の相関関係は無いことが分かる。また、合唱の経験の長さに比例して豊かな「地域イメージ」が形成されるという関係はわずかしか見られない。それとは逆に合唱の経験の長さ、そして居住年数の両方ともその年月が短いほど「地域イメージ」数が多いことがわかる。

残された課題として、それらの特徴が意識的に行われたか、ということについての更なる検討が必要である。


《主要参考文献》
・アーチボールド・T・デーヴィソン著 藤原高夫訳(1967)「合唱指揮」、音楽の友社、83p
・内田順文(1987)「地名・場所・場所イメージ −場所イメージの記号化に関する試論― 」人文地理、39(5)、1−15
・内田順文(1989)「軽井沢における『高級避暑地・別荘地』のイメージの定着について」地理学評論、62A、495−511
・ケヴィン・リンチ著 丹下健三・富田玲子訳「都市のイメージ」 岩波書店、276p
・斎藤隆文・堀恵子・田口哲也・森岡祐一・好井千代(1996)「イメージとしての都市 学際的都市文化論」南雲堂、325p
・関屋晋(1998)「コーラスは楽しい」岩波書店、190P
・尾藤章雄(1992)「東京都区部および周辺地域の『地域イメージ』の構造」
 地理学評論、65A,801−823
・溝尾良隆(1991)「歌謡曲の地域イメージに関する一試論 −関東地方を事例として― 」、首都圏の空間構造、二宮書店、158−168
・守屋博之(1989)「合唱へのいざない」 新日本出版所、187p
・「合唱辞典」(1967) 音楽の友社、656p
・「新訂 標準音楽辞典 アーテ」(1996)音楽の友社


神戸大学・発達科学部・澤ゼミの内容