スポーツによる自律的地域コミュニティ形成について
〜神戸市垂水区団地スポーツ協会を事例として〜
                       
青木 慶弘

<論文要旨>
 本論文は、@近年、地方自治体や地域住民が地域コミュニティを形成しようとする際に利用しようとしている「スポーツ」について、本当にスポーツにより地域コミュニティを形成することが必要であるのか
A地域住民がコミュニティ形成のために何らかの活動に参加し生活することが人間にとって必要であるのかを考察する、の2つを目的とする。


 本論文では、事例地域を取り上げその地域のスポーツクラブに参加している人が「何を考え」「何を目的とし」「どう変化したか」ということを中心として、スポーツとコミュニティが果たして関連するものなのであろうか、そしてこれらの活動が参加者にどのような影響を与え、さらに社会に何を提示するのかを考察する。


第2章では、本論文の中心となる「スポーツ」と「コミュニティ」の従来の研究をまとめて、本論文の理論における基礎的部分を明示した。それは、「スポーツ」の肉体に直接働きかける一次的体験から得ることのできる経験の重要さを明らかにし、「コミュニティ」の定義とコミュニティと人間の生活様式との関係の変遷を明らかにした。さらに、日本でのスポーツとコミュニティの実態を明らかにすることで、事例地域を理解しやすくすることを目的とした。


第3章では、垂水区団地スポーツ協会(以降「団スポ」と略称)の設立経緯、現況の運営方法や参加者の目的、問題点について明らかにした。そのなかで、参加者が「団スポ」の活動を通して「団スポ」への帰属意識と自主性との循環により、帰属意識を深め、さらに自主性を高めていることを明らかにした。


第4章では、垂水区団地スポーツ協会の活動が地域社会にどのような変化をもたらしているのかを「自律性」をキーワードとして読み解き、「団スポ」が地域社会を変えるのではなく、「団スポ」に参加している人が帰属意識と自主性との循環を繰り返すことで「自律性」が芽生え「自律した個人」が誕生し、彼らが一個人として地域社会に関わるようになっていることを明らかにした。また、日本社会において「団スポ」の存在する意味を社会環境と政策と照らし合わせて考察する。


第5章では、これまでのまとめとして、「団スポ」を通じて本論文の目的である2つの問題提起に対して、これからの方向性を示した。
つまり、スポーツはコミュニティを形成する能力を潜在的に保有していることがいえる。しかし、それが発揮されるのは主体者が自発的にスポーツを楽しむという一次的な意味を目的として行われた場合においてのみであり、外的要素として行政などが、コミュニティ形成を促進させるツールとしてスポーツを導入しても、コミュニティのためのコミュニティは存在しないのと同様に、地域住民の主体性がなければコミュニティは形成されないのである。
また、地域コミュニティは地域住民により自主的に運営され、行政や企業などの営利団体とは一線を画した状態においてのみ、自律的人間への成長を遂げることができる。そして、自律的人間こそが自らの豊かさのために自主的に行動できる人間であり、個人を含めたコミュニティ全体の豊かさを求めて行動することが「豊かな」生きかたとなるのである。このような生きかたこそが、従来の環境をより良きものへと変化させることになるために、住民にとって自主的地域コミュニティ活動は意義のあるものとなるのである。
残された課題として、行政が「団スポ」に対してどのような考えをもっていたかということと、指導者の果たす役割についてもこれから、研究が必要である。

<文献表>
相垣幸博(1994):『サーキットと地域おこし』都市問題 85-12 71-78p
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内海和雄(1998):『スポーツ振興と部活動』都市問題研究50-3 64-75p
江上 渉(1995):「都市的生活様式の展開」高橋勇悦・菊池美代志編『今日の都市社会学』学文社pp117-133
奥田道大(1993):『都市社会型コミュニティ』勁草書房 246p
小岩井善一(1994):『サッカーによるまちづくり』都市問題 85-12 p59-69
杉万俊夫、渥美公秀、実吉威、渡邊としえ(2000)『フィールドワーク人間科学よみがえるコミュニティ』ミネルヴァ書房 236p
田口守隆(1998):『私たちの「仕合せ」とスポーツ』都市問題研究 50-3 3-10p
玉木正之(1999):『スポーツとは何か』 講談社 203p
中山正吉(2000):『地域のスポーツと政策』大学教育出版214p
玉野和志(1995):「都市的生活様式の展開」高橋勇悦・菊池美代志編『今日の都市社会学』学文社pp172-186
永吉宏英(1998):『生涯スポーツの現状と課題』都市問題研究 50-3 11-30p
橋本和孝(1995):『地域社会に住む―コミュニティとアメニティ―』世界思想社 250p
松村和則(1990):「地域とスポーツ」菅原禮編『スポーツ社会学への招待』不_堂出版pp77-100
三好洋二(1775):『「コミュニティ・スポーツ」に関する―考察―その成立過程と特質』体育社会学研究4:pp55-65
森川貞夫(1988):『地域スポーツ活動入門』大修館書店
Allen Guttmann著 谷川稔・石井昌幸・池田恵子・石井芳枝訳(1997)『スポーツと帝国〜近代スポーツと文化帝国主義〜』昭和堂 279p
K.Hoggart,H.buller著岡橋秀典・澤宗則監訳(1998)『農村開発の論理〜グローバリゼーションとロカリティ』(上)古今書院 207p
Ommo Grupe 著 永島惇正・岡出美則・市場俊之共訳(1997)『文化としてのスポーツ』ベースボール・マガジン社 155p
Paul Knox 著 小長谷一之訳(1993)『都市社会地理学』(上)地人書房 306p
神戸市(1965):『神戸市総合基本計画』pp7
神戸市(1975):『新神戸市総合基本計画』pp58-71
(財)21世紀ひょうご創造協会(1995)『民間非営利団体の現状と課題』『個人と社会の関わりから見た民間非営利組織(NPO)の機能と役割』地域社会における民間非営利組織(NPO)の役割とその可能性に関する研究 1-40p 113-210p
文部省(2000)『スポーツ振興基本計画』25p

発達科学部・社会環境論・卒業論文題目